Hamamatsu Arts & Creation 浜松アーツ&クリエイション

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やらまいか精神に溢れた
浜松ゆらいの素敵な人やできごとをご紹介します!

地域の魅力を伝える人 Vol.1 映像作家・小林成彦

浜松市引佐町で、地域に関わる皆で作成した地域愛溢れるMusic Video『OCHATSUMI DAYS』が第1回 ”VIVA Drone Award”で千葉 功太郎 賞(コロプラ創業者でホンダのジェット機を日本で初めて購入したあの千葉さんです!)を受賞いたしました!受賞に先立ってFacebook で公開されていた映像は再生回数14,000回を越え、日本全国のみならず、フランス、ポーランドにまでシェアされています。

観光、ではなく、関係人口(=いつもは離れて暮らしていても、どこか心の中でこの地域のことを思い、何か必要があれば駆けつけてくれるような人達)を増やしていくことの大切さ、そしてそれを楽しみながら実現できている引佐地区の状況が浮かび上がってきます。

受賞作品はこちらから

『OCHATSUMI DAYS』

歌:Hiroyuki Shaba Fujita野村 ちひろ

作曲:長大地

歌詞:小林 成彦、Hiroyuki Shaba Fujita

撮影・編集・監督:小林成彦

この素敵な作品を制作した小林成彦さんにお話を伺いました。

Q1 この作品を創ろうと思ったのは、どういう経緯からですか?

僕がいわゆる関係人口の一人だった時、引佐(いなさ)のお茶畑の中にあるお家でよく寝泊まりさせて頂いてたんです。お茶摘みなどの手伝いをしながら、そのお家を拠点に、風景に関する研究論文の調査や取材活動をしていました。その時の恩をどう返したらいいかなと考えた時、地域のみなさんがよくお祭りのDVDをプロジェクターに映してみんなでワイワイ観ていたのを思い出し、何かこの地域をテーマにした映像作品を作りたいと思いました。

もともと、この「いなさ」という町に出逢ったのは震災の年の2011年。当時は公園などの設計を学んでおり、「用(利用)と美(美しさ)」が備わった本物のデザインを勉強したいという思いがありました。「棚田」や「茶畑」といったものがまさにそのデザインだと思い、突然大学を休学し1年間限定の田舎暮らし体験のようなプログラム「みどりのふるさと協力隊」に参加したんです。そこで派遣先として指定されたのがこの町で、ほんとに偶然でした。

そこで体験した1年は、これまでの人生で一番色濃く、すべてが新鮮で刺激的な毎日でした。特にこの町は、地形的にも歴史的にも色々な要素が交差しており、多種多様な生き物や風景、風習が奇跡的に凝縮したところでした。こんなにも自分の知らない日本がいっぱいあったのかと痛感させられました。最初の志しは何処へやら「知られざる農山村の話を伝える」というテーマでフリーペーパーを作成したところ、東京の大会(学生フリーペーパーの祭典・SFF2012)で結構いい賞を頂き、ローカル(地域)が持つ不思議な魅力を伝えるということの楽しさを実感しましたね。

それから全国色々な農山村に足を運びながら、この町にも時々通っていた時に、ちょうど浜松市が「浜松山里いきいき応援隊:略して、山いき隊」の募集をしており、思わず入隊、そのまま任期満了後も定住ということに落ち着きました。山いき隊でも定期的な活動報告をフリーペーパーとしても成り立つような形式で発行し、その過程で色々なお家を周り、暮らしの中の風習や生業についての取材を続けていました。

やがて気づけば僕も30歳のおじさんに。初めてこの町に来てから8年が経っていました。これはごく当たり前のことなのですが、この数年で、お世話になった身の回りの人々がご高齢で亡くなり、確実に地域の人が減っています。それに付随し、何が起きたかというと、これまで取材した地域の風景や文化が一気に消滅をし始めました。これは、僕が魅力として捉えた物事が、実は80歳90歳のご高齢の方々がなんとかギリギリ持ち堪えていたもので、それが色々な事情で継承できず、とうとう消えてきているということがわかったんです。

一方、世の中は動画の時代になりました。誰もが液晶画面・スマホやタブレットを持ち歩くようになり、動画広告やユーチューバーの有用性も広まりました。その結果、これまで高価だった撮影機器が安価に生産され、僕でも買えるようになりました。僕が武器としているドローンや一眼のカメラも時代の恩恵と言えます。

そんな時代の中で見つけた、今自分がやるべきこと、それは、消えつつある風景とそれを作る人々の想いを記録しまとめ、世界にその価値を広めつつも、未来に可能性を託そうということでした。ありがたいことに、こういった農山村の風景を保全しようという動きが各地で起きつつある時代でもありますが、そこで暮らす人々の精神的な部分(価値観、言葉、その意味)やテクニックの継承までは、ちょっと間に合わないかなあという現実もあります。ということで、地元の人々にも世界中の人たちにも楽しんでもらいながら観て、知ってもらえるような作品を、言わば動いて声も出る「風景と人々の遺言」を作りたいと思ったんです。

 

Q2 実際に制作されていく過程はどんなかんじでしたか?

お茶畑の人々の会話や言葉を元に、まず詩をつくり、現山いき隊でラッパーの藤田くんに調整してもらいました。それから歌として誰でも口ずさめるフレーズを入れたり、歌い方をある程度固めてから、同じく隊員の長くんにメロディをギターで演奏&音づくりをしてもらいました。追加で、青森からこの町にお嫁に来たお母さんと小さな娘さんに可愛いフレーズを歌ってもらい、おおまかな歌が形になりました。

それからようやく歌に合わせて既に撮りためておいた映像を組み込み、追加で必要な場面を撮影しました。ドローン撮影についてはすでに山いき隊の活動時に地域の方々には親しんで頂いていたので、撮影中もとても楽しんで頂けました。苦労した点としては、山にはカラスやタカなど、ドローン以上に機動力のある鳥が暮らしているので、彼らの縄張りに入らないように心がけていました。

Q3 この作品に多くの人が惹きつけられたのは、映像の美しさももちろんですけれども、基本的に製作者の方たちの、この地域の人たちに対する深いリスペクト、愛が感じられたからだと思います。

今回の作品はまさに「町民」の方々のご好意とご協力なしではとても成し遂げられませんでした。詩を作る中で、改めて観察したのですが、実はお茶摘みは色々な町民が居て成り立っています。まず、この地域にどっしりと腰を据えて、暮らしの中の生業のひとつとしてお茶畑の管理をする人々がいて、シーズンが到来すると全国各地に散らばる親戚家族が手伝いにやってきます。他の町からお友達を呼んでワイワイやるところも多く、僕らのような山いき隊などの事業をきっかけにお茶摘みに参加する若者もいます。籍を置いてる置いてない関係なしに「さあさ、たんと摘んでくれよ」「あんた、どこから来たの?」という感じで、お茶摘みの舞台に迎え入れてくれる。そんなあたたかい色々な立場の町民の方々の心意気に感動し、その敬意を作品に込めさせて頂きました。

僕がこの町に住み続ける理由として、色々な地域資源を挙げましたが、やはり一番は人のあたたかさだなと思ってます。それは昔の風習や暮らしを伝えるお年寄りだけに限らず、普段は町を離れているけど、いざという時に駆けつけてくれる地元出身の若者・お兄さんお姉さんの存在が大きいんです。そんなお兄さんお姉さんたちが取り組んでいるのが廃校での音楽イベント「ヤマノハコ」でした。子どもたちの声が聞こえなくなった校舎と校庭に、少しでも賑わいを作ろう、たまには故郷に戻るきっかけを作ろうと数年前から定期的に開催しているんです。今回の作品で歌ってくれたラッパーの藤田くんは、このイベントをきっかけに山いき隊でこの地域を選んで来てくれました。メロディ担当の長くんも、このイベントのスタッフに入っており、藤田くんが「彼、音作れるんすよ」と引っ張ってきてくれました。そしてそのご縁を運んできてくれたお兄さんお姉さんは、僕にとってはお茶・またはお茶摘みの先生的存在でもあります。今回の歌、実はそんな彼らの歌としても捉えられるように心がけています。

Q4 この映像をみて、私も茶摘み手伝いたい!と思った方がいらしたら、どうしたらよいですか?

お茶摘みは事前に多少のレクチャーを受けておくと、より楽しいです。どうせなら、地元の方々から明日からも来てよと言って頂けると、手伝う側としてもとても嬉しくなれるので、来年度はお茶摘みを教えられるような機会を用意できればいいなと思ってます。“なんちゃって”ですが、美味しい味を求めて手揉みの釜炒り茶や紅茶づくりをごく偶に仲間でやってますので、余力がある時はこれまた仲間でやってるFacebookページ「山のしんぶん舎」でお知らせ致します。

 

Q5 この映像をみて、引佐に行ってみたいと思った人たちに、引佐のお薦めスポットなどを教えてください!

町の南側なら、立須(たちす)という遠州を一望できる岩山がおすすめです。公園整備はいっさいされていない自然の岩場なので、自己防衛必須ですが、ほんとに素晴らしいところです。町の北側なら、古東土(ふるとうど)というお茶畑の景色が一望できるスポットですね。石積みがされた村を探検するのも楽しいですよ。

 

Q6 次に浜松で撮影したいと思っている地域や題材はありますか?

2つあって、1つは海・浜名湖について。もう1つはみかんについて。知ってるようで知らないことがきっといっぱいあると思うんです。

小林成彦(こばやしなるひこ)

平成元年生まれ

長野県長野市出身/埼玉県所沢市育ち

東京農業大学・大学院(修士課程)卒

大学を休学し、緑のふるさと協力隊に参加し引佐町で1年間、月5万円の支給で田舎暮らしを体験する(2011年〜2012年)。引佐での出来事をまとめた冊子「遠州引佐点検報告」を学生フリーペーパーの祭典SFF2012に出展したところ、準グランプリとオーディエンス賞を受賞。2013年〜2015年にかけて東京都墨田区内の下町にあるシェアハウスで暮らしながら、週一回開催されるマルシェ「すみだ青空市ヤッチャバ」を少し手伝いながら、フリーペーパー「やっちゃばん」を制作。2015年夏から浜松市の浜松山里いきいき応援隊(地域おこし協力隊)に参加し引佐町に舞い戻る。任期中にドローンで町内の名所を空撮した作品「いなさ空中散歩」を制作し、浜松市地域遺産センターで常設上映。また、地域の魅力や取組みを紹介する紙媒体「山の新聞いいとこまんじゅう」を発行(現在12号)。任期終了後の2018年夏から映像会社の株式会社filments(フィルメンツ)にカメラマンとして就職。2019年秋に独立を予定している。