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2022.08.25INTERVIEW

ペーパーキルト作家のテツジ山下さんにお話を伺いました

 

 

浜松アーツ&クリエイション News Letter 09の表紙をご担当いただいた、浜松市で活動を行う、ペーパーキルト作家/グラフィックデザイナーのテツジ山下さんにお話しを伺いました!皆さんは「ペーパーキルト」という作風の美術作品をご存知でしょうか?

この記事を通して、新たな美術ジャンルを知っていただけたら嬉しいです。

 

 

―まずは、ご自身の活動について教えてください。

コラージュを発展させた「ペーパーキルト」という作品を制作しています。

作品は洋紙をミリ単位で切って、それらのパーツを重層的に貼り合わせていくことでつくられます。切り出す形や大きさに適したカッターナイフを使い分けながら、パーツを切っては貼り、切っては貼りの繰り返しです。なにせ人の手でつくり上げる作品なので、作っていくうちに数ミリずつの誤差が出てきます。なので、そこを見越してパーツを切り出し、臨機応変に形を整えていくことがペーパーキルトの醍醐味でもあり、難しさでもあります。作品のテーマは、アフリカを中心にピアノのようなサウンド、慈しみ等の感情など多岐にわたります。比較的色鮮やかな配色を好むのは旅の影響ですね。

 

 

 

―「ペーパーキルト」という作品はどのように生まれたのですか?

昔話になりますが、大学の卒業制作で「動物」をテーマにした作品をつくろうと思いました。それで「生き生きとした実物のライオンが見たい!」と思い立ち、アフリカが行ったことがきっかけです。しかも、当時大学4年生で、あと半年で卒業という時期でしたから、1年間の休学は大きな決断でした。ケニアでスワヒリ語を習いながら現地の空気に触れ生活していくうちに、自分の人生観が180度変わってしまったんです。

当時生活する中でアフリカのデザインは「〇・△・□」が基本構造としてあり、これは形として完成されていること、また、同じデザインを「繰り返す」連続性、普遍性に生命のリズムを感じました。そして帰国後に、これらの感性で作品制作がしたいとつくり始めたのが原点です。

ペーパーキルトという名前は、2007年カンヌ国際展覧会に作品を出品し、受賞した際に訪れたフランスとオランダで原画を持ち込んだところ、オランダの画廊主から「ペーパーキルトだね」と言われたことがきっかけで、そう呼ぶようになりました。
ただ、この言葉が2007年当時からあった言葉なのか、私の作品が生み出した新しい言葉なのかは検証のしようがありません。願わくば後者であって欲しいですね。

 

 

 

―作品制作のテーマはどのように決めているのでしょう?

制作スタイルとして、まず「言葉」を探します。

つくりたいと思った作品のテーマについて、関連する言葉をノートにどんどん書き出していきます。そしてその中からぴったりの言葉を抽出していくことで作品の軸となるテーマが完成し、そこからラフデザインを描いていくと、そのテーマのイメージが形となって現れてきます。常に作品の根底には、テーマとなる言葉が存在していて、それらがイメージとなり目に見える形として作品になっていきます。

 

 

 

―それでは、今回制作いただいたNews Letter 09の表紙について教えてください。

まずは、いただいた「進歩」というテーマについて、言葉がもつ意味を自分なりに考えました。「歩みを進める」つまりは「今」から「動く」ということです。「今」「動く」これらの言葉から想像し、考えていくうちに頭に浮かんできたのは将棋でした。将棋の歩兵は1マス前にしか進めませんが、敵陣にはいると〈と金〉になって進化を遂げます。歩兵の一歩一歩の積み重ねは、やがて劇的な変化を生みますが、この過程は地味で見えにくいものです。そしてこれは、あらゆる事に共通しているのではないでしょうか?歩兵が成ると現れる〈と〉の文字は、「今」という漢字を崩した形という説があります。今を崩しながら一歩一歩力強く歩みを進め、ふと振り返って見える形が「進歩」ではないかと思うわけです。

 

 

浜松市内にある美術研究所でも活動されているそうですね。

浜松に戻ってきたタイミングでお世話になった美術研究所のお手伝いをさせていただくことになりました。研究所内では備品の管理からクロッキー会の開催などを担っています。私のアトリエもこの美術研究所内にあり、ほぼ毎日在室しています。生徒さん達は日を問わずやって来ますから、若い人達とコミュニケーションができるお陰で心地よい刺激を受けています。また、恩師の生徒達への指導を直に学べるため、私にとってはこれほど有難い場所はないですね。

 

 

今後チャレンジしてみたいことはありますか?

ペーパーキルト作家としてちょうど15年が経ちました。私事ですが、現在毎月発行の音楽雑誌『ムジカノーヴァ』の表紙を担当させていただいており、その表紙の原画展を全国で開催しようと計画しています。ムジカノーヴァは全国誌ということもあり、音楽をきっかけにして、美術にも興味・親しみを感じてくれる方が増えてきていると実感しています。そういう方達にぜひ、ペーパーキルトの原画を見ていただけたらと思います。そしてその原画展に併せて、イメージ曲となったピアノのコンサートを同時に開けたら良いなぁ、と。まさに「見て、読んで、耳を澄ます」展覧会を実現させたいです。

 

 

<テツジ山下>

静岡県浜松市生まれ。名古屋芸術大学美術学部デザイン科卒業後、グラフィックデザイナーとしてデザイン事務所勤務。大学在学時に1年間休学し、ケニア渡航。ジンバブエなど5カ国を旅する。帰国後、旅の経験を元に貼り絵制作を始め、2007年カンヌ国際展覧会での受賞を機に作家として独立。他に類を見ないユニークな手法はオランダで「ペーパーキルト」と評され、個展・グループ展を通して国内外で発表されている。

HP:Paper Quilt | テツジ山下

Instagram:Tetsuji Yamashita(@swala918)